最近になって統合失調症が減少し、軽症化していると言われるようになってきた。今回はこの件について考察した論文「統合失調症の減少と軽症化はあるのか」*1 の要約を掲載する。
最近の臨床現場で、統合失調症の初発患者との出会いが四半世紀前に比して少なくなり、また軽症化していると、多くの精神科医が感じているのは事実である。
最も新しい診断基準であるDSM-5では統合失調症の生涯有病率が0.3〜0.7%と記載されている。一方、2000年のDSM-Ⅳ-TRでは0.5〜1.5%であり、約10年で低下していることが分かる。
大学病院と総合病院での統合失調症の初診外来患者の10年間の変化を調べた研究では、大学病院で8.5%から6.9%、総合病院で11.0%から5.4%に減少したことを報告した。クリニックについての研究では、外来患者が2001年からの10年間で29%から9%に落ちているという結果であった。また、最近の大学生における休学、退学理由の調査では、2013年の休学、退学理由について、メンタルヘルスによるものが25年前に比してかなり増加している中で、統合失調症については激減したという。
以上の報告から、統合失調症が減少傾向にあることについて、ある程度の納得はできるだろう。
筆者はこの10年間、統合失調症の好発年齢とされる大学生に対してメンタルヘルス管理の視点からもみてきたが、精神障害として多かったのはうつ状態を示す適応障害や、社交不安障害、発達障害であった。この中で統合失調症はあまりみられず、やはり相対的に少ないと言える。大学生における統合失調症の初発例には軽症化が目立っていた。
その特徴は、服装や頭髪は一般学生と変わらず、表情が普通で、ラポール(心の通い合い)が良好で、普通に会話もできるため、外観による客観指標からでは診断がつかないことである。そのため、幻聴や被害・関係妄想を主とした自らの体験について話されて初めて精神病症状がつかめてくる。さらに、良くなりたいといった本人の治療意思を持った来院であり、病識を持っている症例も多い。薬物療法にも肯定的で、アドヒアランス(服薬尊守)が良く、自発的に通院し、その後の薬物反応性も良好な経過をとる。
こうした軽症化の背景にはいくつかの要因がある。1つ目には精神分裂病から統合失調症への病名変更である。病名変更によって精神分裂病という重いスティグマがなくなり、前駆期や発症初期の段階で受診に至るケースが増えたこと。2つ目には非定型抗精神病薬の開発によって、副作用による服用中断が少なくなり、精神症状の増悪の抑制につながった。3つ目には精神科病院の新設や改修が進み、明るく快適で過ごしやすい印象ができたことと、明るい雰囲気のメンタルクリニックの増加により、精神科受診の敷居が低くなったとこにより、早期の医療介入につながった。
このほかに外来治療の充実、早期の治療介入に向けたアンテナ網の充実、及び統合失調症発症前における治療介入なども相まって、統合失調症の軽症化がもたらされたと考えられる。
(要約ここまで)
私は発症しても入院したことはないし、仕事も普通にできていたし、仕事への影響はなかったと言ってよい。私の場合はかなり軽症の部類に入るだろう。そもそもDSMの診断基準のみからすれば私のケースは統合失調症に当てはまらないだろう。妄想はあっても幻聴はなかった。正確に言えば1回だけ幻聴と言えるものはあったがそれだけだ。仕事もできていたのでDSM上では統合失調症とは言えないと思う。医師の診断は統合失調感情障害だった。
私の症状は、他人の咳払いが自分を馬鹿にしていると感じること、アパートの階下の住人からいろいろ嫌がらせをされていること。例えば階下から壁をコツコツ叩く、夜に階下の窓をガシャんと思いっきり強く閉める、就寝中に1階から2階の床をトントンと突き上げて揺すり就寝を邪魔する、などである。
医師からは、他人の咳払いは妄想で、叩くなどの物音は幻聴と判断されたのかもしれないし、階下から床を突き上げられたというのは体感幻覚と見做されたのかもしれない。
いずれにしても私のケースは典型的な統合失調症とは言えないであろう。
*1 須賀英道 龍谷大学短期大学部社会福祉学科