社会心理的ストレスが原因で、身体に気質的、機能的な障害の起きる精神疾患を「心身症」という。
心身症の疾患としてよくみられるものには消化性潰瘍、過敏性腸症候群、機能性ディスペプシア、疼痛性障害などがある。
消化性潰瘍には胃潰瘍、十二指腸潰瘍、潰瘍性大腸炎などがあり、過敏性腸症候群の症状には下痢や便秘、機能性ディスペプシアでは腹部膨満感などがある。この他にも本態性高血圧、アトピー性皮膚炎、頭痛も心身症の疾患に含まれる。
心身症では、心理社会的ストレスが原因であるため、症状に対しての通常の治療では改善を見ることが困難だという特徴がある。
この心身症の原因と考えられているのが「失感情症(アレキシサイミア)」という性格傾向である。
アレキシサイミアの人には、自分の感情への気づきや感情を言葉で表現することの難しさ、内省の乏しさ、空想力の弱さといった特徴を持つ性格の傾向がある。
そうした人ではストレス状況下でそれを自覚して言葉で表現することができずに、ストレスの影響が身体面の症状として現れてくることになる。
昔から「物言わぬは腹ふくるるわざなり」ということわざがあるように、ストレスを自覚してそれを言葉として表現することができない人では、ストレスの影響が身体に出てくるのである。
私は20代に十二指腸潰瘍に罹り、再発を繰り返して最終的には胃酸の分泌を抑えるために、胃の3分の2を切除する手術を受けた。この十二指腸潰瘍は仕事などのストレスが原因の心身症の症状だったと考えられる。
アレキシサイミアの性格傾向かどうかを調べるテストにTAS-20がある。このテストは20問からなり、それぞれの質問への回答の点数を加算する。
1点 まったく当てはまらない
2点 あまりあてはならない
3点 どちらともいえない
4点 ややあてはまる
5点 非常にあてはまる
次にTAS-20の各問を掲載するのでチェックしてみてほしい
1. しばしば自分がどのような感情を持っているのかわからなくなる
2. 自分の性格を正確に表す言葉を見つけることは難しい
3. 医者にも理解できないような身体的な感覚を持っている
4. 簡単に自分の感情を表現できる
5. ただ問題を説明するよりも分析する方を好む
6. 気が動転しているとき、悲しいのか、恐ろしいのか、怒っているのかわからなくなる
7. しばしば自分の身体の中の感覚に当惑する
8. なぜそのようになったのかを解明するよりも。なるがままにしておく方を好む
9. 自分でも理解できない感情を持っている
10. 人の気持ちに共感することは大切である
11. 人に対して自分がどのように感じているかを述べることは難しい
12. もっと自分の感情を表現するように、人から言われる
13. 心の中の変化を理解できないことがある
14. しばしば自分がなぜ腹を立てているのか、わからなくなる
15. 感情に関する話題よりも、日常の行動に関する話題を好む
16. 心理的なドラマよりも、軽い娯楽番組を好む
17. 親しい友達にも自分の心に秘めた感情を明らかにすることはできない
18. 黙っていても、人に親近感を持つことができる
19. 自分の感情を理解することが、個人の問題を解決することに役立つと思う
20. 映画や演劇を鑑賞するとき、そこに隠された意味を探していては面白みがなくなると思う
注)項目4, 5, 10, 18, 19は採点を反対に行う。1点は5点と数え、5点は1点と数えるなどのように。
採点の合計点が61点以上の場合をアレキシサイミアと判定する。
採点結果は幾つだっただろうか。私がやってみたところ62点という結果となった。ギリギリ、アレキシサイミア傾向だということらしい。
どれを選択してよいか迷う質問が結構あったので、再テストを行うとまた違った結果になるかもしれない。
自分の感情を自覚し、それを他者に言葉として表現することが、身体の健康にとって重要だということが、失感情症(アレキシサイミア)概念からいうことができる。