統合失調感情障害日誌

統合失調感情障害を患っている管理人のこれまでの日誌です

統合失調症の始まり

間もなく30歳になろうかとする時期である。何か精神的に不安定になってきた。

満員の電車に乗っていると、隣の人が自分を押しのけてくるように感じられ、怒りを感じた。押し合いのような感じになったこともある。被害者意識による攻撃性の表れである。

アパートで風呂に入っている時に、今日一日、他人から受けた理不尽な振る舞いを思い出してはぶつぶつと独り言を繰り返した。

夜遅く、なんとも表現のしようのない焦燥感のようなものを感じて、自転車で深夜の街を猛スピードで疾走することが習慣のようになった。

ある時期には、同じ電車で乗り合わせている女性が私を好きなのではないかという思いが生じて、毎日その女性の近くで電車通勤するようになった。そのうち、その女性が我慢の限界に達したのか、私の方を向いて睨みつけるような表情をした。それ以降、その女性への被愛感情は消え去った。

夕暮れ時の職場に西日がさしていた。広いオフィスに通路を背に窓側を向いて社員が座っていたはずだが、その時は目に入らなかった。なんだか分からないがこれから何か悪いことが起こる予感がしていた。頭の中にはムンクの「叫び」のイメージが浮かんでいた。

これらの感情や意識は、統合失調症発症の前の前駆期における症状だと考えられる。

30歳頃、休日に趣味で使う品物を購入して帰宅のために駅のホームを歩いていた時である。なんとなく周りの人が自分を注視しているように感じた。

帰りの電車の中でも周りの視線を感じて緊張してしまう。こんなことはこれまでになかったことである。そして高校時代に苦しんだ歩き方への囚われがまた起きるようになった。そうなると自然な歩き方ができなくなってぎこちない歩き方になってしまう。

すると私の後ろを歩いていた人が必ずと言っていいほど咳払いするようになった。それとともに自分の視線や泣いたような表情が他者に不快感を与えるようで、すれ違いざまにも咳払いされるようになった。

出勤時は後ろを歩く人が咳払いし、仕事中は後ろの通路を通り過ぎる社員が咳払する。咳払いする人は数十人に一人程度の頻度だが、よく咳払いされるのでいじめをされているように感じた。

30歳代後半、歩き方へのとらわれはひょんなことから解消した。会社ではいていた内履きが傷んできたのでべつの内履きに買い替えたのだ。すると自然に歩けるようになった。それまでヒールがやや高かったのだが、ヒールの低い内履きに替わったことがよかったようだ。

自然に歩けるようになったら、後ろから咳払いされることは激減した。しかしゼロにはならない。たまたま実際に喉の違和感で咳払いする人もいるからだろう。ただ、すれ違いざまに咳払いされる頻度には変わりがなかった。

これらの「症状」はそれだけをとってみれば確信型の対人恐怖の可能性が考えられるが、その後の経過をみると統合失調症に近似した症状だといえる。

この頃には幻聴と思われる体験もあった。

通勤電車が始発駅で発車を待つ間、シートに座っていると突然「○○」と私の名字を話す声が聞こえたのだ。声の主はドアの近くにいた2人の女子高生だった。私の名字はかなり珍しいので偶然の一致は考えにくい。空耳の可能性もあるが、その時の私には確かにその名前を聴いたと思えた。

なぜ見知らぬ女子高生たちが私の名前を知っているのか気味の悪い思いをした。

もう一度は職場のエレベーターに他の社員10人あまりと一緒に乗って上階に動いているときだった。そのエレベータは大型で、一度に20人くらいまで乗れる。突然、私の後ろから誰かが「心の病!」と大声で叫ぶ声が聞こえた。

私はびっくりして後ろを振り向いた。だが誰もが無表情に前を向いているだけだった。その当時、私は歩き方にとらわれていて、私がおかしいことは誰もが知っている状況だった。だから誰かが私をからかって叫んだのかもしれないと思った。だが実際のところ、そんなことで大声で叫ぶことがあり得るだろうかとも思った。

しかし、その声は本当に間近で大声で叫ぶもので、圧倒的な迫真感があった。その声は幻聴だった可能性がある。