統合失調感情障害日誌

統合失調感情障害を患っている管理人のこれまでの日誌です

幻覚は五感全てに現れうる

統合失調症になると幻覚が生じる。統合失調症の幻覚で多いのは聴覚の幻覚である幻聴だ。視覚の幻覚である幻視は統合失調症では少ない。そのほかの幻覚には嗅覚の幻覚である幻臭、味覚の幻覚である幻味、触覚の幻覚である幻触がある。そのほかに異常な体の感覚を感じる体感幻覚もある。

私に生じた幻覚は幻聴と幻触である。幻聴は隣の部屋から聞こえたコツ、コツ、と叩く音だったり、階下の部屋から聞こえた勢いよくガラス窓をピシャリと閉める音だったりする。1度だけ人の声の幻聴を聞いたことがある。

幻触は実際には触れられていないのに触れられていると感じる幻覚である。私の場合、階下の部屋から床下を突き上げられるという感覚を感じた。寝ようとすると階下から何か突き上げられるような感覚がするのである。それは1秒に1回くらいの間隔ではっきりと感じられた。1回の住人が私の就寝の邪魔をしていると思った。

その感覚は日中にも感じられた。ベッドの位置を部屋の別の場所に移したにも関わらず、同じように階下から突き上げられるのである。その時はうつ状態であったので日中もベッドで横になろうとするのであるが、階下からの突き上げで眠れない。

部屋のどの位置で横になっても突き上げられる感覚がする。まるで私が部屋のどこで横になっているのかが階下の住人に知られているようだった。6畳の部屋ではどこでも突き上げられるので、隣のキッチンで横になってみた。そうしたら階下からの突き上げは感じられなくなった。その時、隣のユニットバスからカタンという音が聞こえた。階下の住人が突き上げることができなくなった腹いせにユニットバスの底面を叩いたのだと思った。

その当時はうつ状態がひどくて実覚に戻ってうつの治療を行い、うつが良くなった3ヶ月後に再び部屋に戻ってきた。その時は突き上げられる感覚は感じなくなっていた。うつの治療で軽躁状態気味になっていたように思う。

冷静になって考えると、階下の住人が階上の住人のいる位置を察知して、横になったときに階下から突き上げるなどということが可能だとは思えない。だが当時は実際に体が揺らされる感覚を感じていたので、それが幻覚だという発想は全く持てなかった。

胃がん発覚でうつ状態

4年ほど前に胃がんの手術をした。手術といっても内視鏡を使うもので、胃の表面にできたがん組織を電気メスで切り取る手術である。一応全身麻酔をするが、手術自体は1時間もかからず、術後1週間ほどで退院できる。

10年ほど前の会社の健康診断で胃のレントゲン検査を受けたところ、胃に怪しい部分があるということで、街の胃腸科で内視鏡検査を行ったら、胃の出口にポリープが見つかった。それでそのポリープの組織検査を行なったのだが、良性とのことだった。

その後、数年が過ぎて胃のポリープのことが気になり、胃腸科で内視鏡検査を行なったところ、がん組織だということが分かった。数年のうちに良性だったポリープが悪性に変化したのだ。

手術のできる大病院で内視鏡検査を受けたところ、胃の出口にできたポリープのある場所が胃の組織の薄い部分にあるので、内視鏡のメスで周辺の組織ごと剥ぎ取るのは難しい。最悪の場合、胃に穴が開いて開腹手術が必要になるかもしれない。手術は内視鏡手術からいつでも回復手術に移れるようにする。開腹手術では胃を全摘することになると言われた。

私はそれを聞いてとても不安になった。開腹手術は20歳代の時に経験しているが、その時に経験した強い痛みがトラウマになっている私には、再びあの激痛を経験しなければならないかもと思うと強いストレスを感じた。その上に20歳代に胃の3分の2の摘出手術を受けていた私は、胃を全摘することになるかもしれないということも大きなストレスとなった。胃を全摘してしまうと食事量が大幅に制限される。そのことで体重が大きく減少するという。元から痩せていた私はこれ以上痩せたら日常生活に支障が出ることになると思った。

胃がんが発覚してからの一連の出来事で私はうつ状態となった。気分が落ち込み何事にも興味を持てなくなった。食欲が一気に落ちてしまった。うつ状態を自覚した私は抗うつ薬を服用したがほとんど効果が感じられなかった。

そうして鬱々とした気分で過ごしていた中、手術前の最後の内視鏡検査で、胃のポリープの周辺の組織にはがんがないことが分かった。手術はポリープの周辺を小さく切り取るだけで済むことが分かったのだ。これで開腹手術や胃の全摘を行わなくてもよいことになった。そうしたら私のうつ状態は速やかに改善した。手術当日は安心して手術を受けることができたのだ。

手術後から2年目まで定期的に内視鏡検査を受けたが異常なしという結果だった。今回のがん発覚では幸い最後に良い結果となったが、がん発覚でうつ状態となったことに関しては、私は相変わらずストレスに弱いと自覚せざるを得なかった。

入院するほどではない統合失調症

統合失調症(正確には統合失調感情障害)と診断されてるがそれで入院したことはない。症状が出ている時期でも会社に出勤して普通に仕事をしていた。それだけ軽症だったということなのだろう。

統合失調症の幻覚では幻聴がよくみられるが人の声による幻聴と考えられることがあったのは1回しかない。物音による幻聴らしきものは頻繁にあったが、それが幻聴だったのか現実の物音だったのか、今でもはっきりとしない。医師はそれを幻聴とみなした可能性が高い。

時々自分は統合失調症ではなくて対人恐怖(社交不安症)なのではないかと思う時がある。今ある症状は他人の咳払いが自分を馬鹿にしているように感じられることである。

他人の咳払いが自分に向けられたものと感じられる精神疾患には統合失調症と対人恐怖がある。統合失調症の場合、他人の咳払いは自分に対して危害を加えるなどを示唆するものと感じられるが、対人恐怖の場合は自分が見下される意味を含み、自分に恥の意識が生じる。私の場合、他人の咳払いは馬鹿にされたと感じるので、私の症状は対人恐怖的な症状だといえる。

今現在は統合失調症の症状はほぼ無いと思う。あるのは対人恐怖の症状である。ある研究によれば、統合失調症患者における不安障害の有病率は38%と推定され、社交不安障害が最も一般的であるという。

私は高校1年の時に赤面恐怖や視線恐怖といった対人恐怖の症状を発症した。症状の中には自分の歩き方が後ろの人にどう見えるか気になりぎこちなくなるという症状もあった。その時は他人の咳払いは無かったように思う。その対人恐怖の症状はいつとはなしに気にならなくなった。それが再び気になり出したのが30歳の頃である。その時からは他人の咳払いが自分に向けられたものと感じられた。

私の場合は対人恐怖が悪化して統合失調症を発症したのだと思う。

軽躁が収まってきた

先月初め頃から明らかに軽躁状態となっていたが、最近になって収まってきた。1ヶ月近く続いた軽躁で何かとAmazonなどで買い物を繰り返し、この間に20万円近くは使ったと思う。性欲亢進も収まってきた。20万円の出費は痛い。軽躁状態になるとブレーキが効かない。今軽躁状態にあると分かっていても自制することができない。

軽躁状態が収まって平常状態となったが、時々落ち込む日が出てきた。だがまだうつ期になったとまではいえない。

大雑把にいって2月が軽躁状態、3月がうつ状態、4月が軽躁状態だった。5月の現時点では軽躁でもうつでもない、寛解状態である。何だか軽躁とうつの波の変化が短い間に多いようだ。

先日通院して医師に軽躁が収まってきたことを話した。それまではクエチアピン100mgとジプレキサ5mgを処方されていたが、自分からリクエストしてエビリファイ6mgを追加してもらい、クエチアピンは処方から外してもらった。クエチアピンは一時期はうつに効果があったのだが、便秘になるのでやめることにした。下剤を処方されていたのだが、使い続けると耐性がついてしまうのでよくない。

就寝前にジプレキサ5mg、朝食後にエビリファイ6mgを服用しているが、エビリファイを服用後に1時間ほどすると眠気が強く出る。6mg程度の少量で副作用の眠気が出るのは意外だった。

まだこの処方で数日しか経っていないので効果のほどはまだ判断できないが、うつに効いているように感じる。

統合失調症の減少と軽症化

最近になって統合失調症が減少し、軽症化していると言われるようになってきた。今回はこの件について考察した論文「統合失調症の減少と軽症化はあるのか」*1 の要約を掲載する。


最近の臨床現場で、統合失調症の初発患者との出会いが四半世紀前に比して少なくなり、また軽症化していると、多くの精神科医が感じているのは事実である。

最も新しい診断基準であるDSM-5では統合失調症の生涯有病率が0.3〜0.7%と記載されている。一方、2000年のDSM-Ⅳ-TRでは0.5〜1.5%であり、約10年で低下していることが分かる。

大学病院と総合病院での統合失調症の初診外来患者の10年間の変化を調べた研究では、大学病院で8.5%から6.9%、総合病院で11.0%から5.4%に減少したことを報告した。クリニックについての研究では、外来患者が2001年からの10年間で29%から9%に落ちているという結果であった。また、最近の大学生における休学、退学理由の調査では、2013年の休学、退学理由について、メンタルヘルスによるものが25年前に比してかなり増加している中で、統合失調症については激減したという。

以上の報告から、統合失調症が減少傾向にあることについて、ある程度の納得はできるだろう。

筆者はこの10年間、統合失調症の好発年齢とされる大学生に対してメンタルヘルス管理の視点からもみてきたが、精神障害として多かったのはうつ状態を示す適応障害や、社交不安障害、発達障害であった。この中で統合失調症はあまりみられず、やはり相対的に少ないと言える。大学生における統合失調症の初発例には軽症化が目立っていた。

その特徴は、服装や頭髪は一般学生と変わらず、表情が普通で、ラポール(心の通い合い)が良好で、普通に会話もできるため、外観による客観指標からでは診断がつかないことである。そのため、幻聴や被害・関係妄想を主とした自らの体験について話されて初めて精神病症状がつかめてくる。さらに、良くなりたいといった本人の治療意思を持った来院であり、病識を持っている症例も多い。薬物療法にも肯定的で、アドヒアランス(服薬尊守)が良く、自発的に通院し、その後の薬物反応性も良好な経過をとる。

こうした軽症化の背景にはいくつかの要因がある。1つ目には精神分裂病から統合失調症への病名変更である。病名変更によって精神分裂病という重いスティグマがなくなり、前駆期や発症初期の段階で受診に至るケースが増えたこと。2つ目には非定型抗精神病薬の開発によって、副作用による服用中断が少なくなり、精神症状の増悪の抑制につながった。3つ目には精神科病院の新設や改修が進み、明るく快適で過ごしやすい印象ができたことと、明るい雰囲気のメンタルクリニックの増加により、精神科受診の敷居が低くなったとこにより、早期の医療介入につながった。

このほかに外来治療の充実、早期の治療介入に向けたアンテナ網の充実、及び統合失調症発症前における治療介入なども相まって、統合失調症の軽症化がもたらされたと考えられる。

(要約ここまで)


私は発症しても入院したことはないし、仕事も普通にできていたし、仕事への影響はなかったと言ってよい。私の場合はかなり軽症の部類に入るだろう。そもそもDSMの診断基準のみからすれば私のケースは統合失調症に当てはまらないだろう。妄想はあっても幻聴はなかった。正確に言えば1回だけ幻聴と言えるものはあったがそれだけだ。仕事もできていたのでDSM上では統合失調症とは言えないと思う。医師の診断は統合失調感情障害だった。

私の症状は、他人の咳払いが自分を馬鹿にしていると感じること、アパートの階下の住人からいろいろ嫌がらせをされていること。例えば階下から壁をコツコツ叩く、夜に階下の窓をガシャんと思いっきり強く閉める、就寝中に1階から2階の床をトントンと突き上げて揺すり就寝を邪魔する、などである。

医師からは、他人の咳払いは妄想で、叩くなどの物音は幻聴と判断されたのかもしれないし、階下から床を突き上げられたというのは体感幻覚と見做されたのかもしれない。

いずれにしても私のケースは典型的な統合失調症とは言えないであろう。


*1 須賀英道 龍谷大学短期大学部社会福祉学科